![]()
押さえておきたいポイントはこれだ!
平成21年度税制改正を5分で理解
不動産経営に影響する、税制改正のポイント
平成21年度の税制改正も、平成21年3月末の国会決議を経て、正式法案になり実際に施行となります。平成20年度のようなひと悶着もなく、スムーズに施行された感があります。税制改正の中で不動産経営へ少なからず影響を及ぼす改正点について、抜粋してお届けします。
平成21年度税制改正のうち、不動産に絡むトピックスは以下のとおりです。
(1)住宅税制
- 住宅ローン減税の適用期限を5年間延長。最大控除可能額を500万円(長期優良住宅の場合には600万円)に引上げ。
- 自己資金で長期優良住宅の新築等をする場合や省エネ及びバリアフリー改修を行う場合の税額控除制度を創設。
(2)土地税制
- 平成21年、22年に取得する土地を5年超所有して譲渡する際の譲渡益について1,000万円の特別控除制度を創設。
- 事業者が平成21年、22年に土地を先行取得して、その後10年間に他の土地を売却した場合、その譲渡益課税を繰り延べることを可能とする制度を創設。
- 土地の売買等に係る登録免許税の軽減措置の現行税率を2年間据え置き。中小企業の事業承継を円滑化するため、非上場株式等に係る相続税及び贈与税の納税猶予制度を導入。
では、順を追って、ポイントを述べていきます。
土地の取得・譲渡に影響をおよぼす税制改正1
『土地等の長期譲渡所得の1,000万円特別控除制度』が創設されました
(1)前提条件
平成21年1月1日~平成22年12月31日までの間に国内にある土地等を取得する。
(2)譲渡時期
譲渡は取得後5年超であること(譲渡年の1月1日における所有期間が5年を超えるもの)。
(3)税額計算上
譲渡所得の金額(譲渡益)から1,000万円を控除する(控除額は、譲渡益額が上限)。
ここがポイント!
「5年先の話を、いま、言われても…」とお考えの方もいるでしょうが、考えようによっては、譲渡利益が単純に1,000万円圧縮されるので、お得感があります。しかも、個人不動産事業者、法人事業者ともに共通する改正です。
土地の取得・譲渡に影響をおよぼす税制改正2
『土地等の先行取得をした場合の課税の特例』が創設されました
(1)前提条件
平成21年1月1日~平成22年12月31日までの期間内に、国内にある土地等を取得する。
取得事業年度(個人事業者は取得年)に係る確定申告期限までに特例を受けるための届出書を提出することが要件。
(2)譲渡資産
取得後10年以内の土地であること。
(3)税額計算上
譲渡益の80%※の課税を繰り延べる(現行の事業用資産買換えと同じような考え方です)。
※80%は先行取得が平成21年中であった場合。先行取得が平成22年中であった場合は60%に変わります。
ここがポイント!
今度は10年超の譲渡を前提にした規定です。
なお、既存の買換え特例では、取得後10年超の物件の譲渡を前提とした規定が一般的であったため、所有期間が短い物件でも適用できるので、経営計画が立てやすくなったと言えるでしょう。この改正も、個人の不動産事業者、法人に共通する改正です。短期的に売却を想定している場合は、有効規定と言えるでしょう。
相続・事業継承に影響をおよぼす税制改正
非上場株式等に係る相続税の納税猶予制度が新設されました
(1)非上場株式等に係る相続税の納税猶予制度とは
経営承継相続人(適用株の取得者)が、認定中小企業者の議決権株式等(非上場株式)を取得した場合、経営承継相続人の相続税額のうち、その議決権株式等(その発行済議決権株式総数等の3分の2以下の部分)に係る課税価格の80%に対応する相続税額については、その経営承継相続人の死亡等の日までその納税が猶予されます。
(2)納税猶予とは
納付義務は残しつつ、税金の即時納付のみ猶予するものです。
A.次の承継者に対象株が引き継がれるまで(死亡による引き継ぎ)。この場合、猶予されていた状態が、正式免除になります(納税はその後しなくて良い。)
B.猶予対象者が、法人経営をやめた場合はそのやめる日まで。猶予されていた状態が否認され、猶予期間分の利子税も合わせ、即時納付が必要になります。
(3)適用株式の制限
続開始前3年間に経営承継相続人の同族関係者(親族等)からの現物出資※又は贈与により取得した資産の占める割合が70%以上である会社に係る株式等については適用できません。
※ここでいう現物出資とは、法人設立の際の資本金を金銭ではなく、現物財産(土地・建物など)で提供することをいいます。
ここがポイント!
事業承継のため法人を設立しても、その代表者が設立後3年以内に死亡した場合に承継を受けた株式については、結果として適用できないこととなります。個人投資家で将来的に法人経営をお考えの方は(相続開始の可能性を考慮しつつ)早目の法人設立を検討すべきでしょう。
その他の改正点
優良賃貸の割増償却に係る措置が変更されました
優良賃貸住宅の割増償却制度における高齢者向け優良賃貸住宅に係る措置について、次のとおり割増率の見直しが行なわれ、その適用期限が2年延長されました。
(1)一定の認定支援施設と一体として整備が行われた支援施設一体型高齢者向け優良賃貸住宅及び認定支援施設
耐用年数が35年未満であるもの 普通償却費の100分の40(改正前100分の28)
耐用年数が35年以上であるもの 普通償却費の100分の55(改正前100分の40)
(2) 上記(1)以外の高齢者向け優良賃貸住宅
耐用年数が35年未満であるもの 普通償却費の100分の20(改正前100分の28)
耐用年数が35年以上であるもの 普通償却費の100分の28(改正前100分の40)
ここがポイント!
従前からある『優良貸家住宅の割増償却制度』の拡充です。割増償却制度とは、普通の建物の減価償却は定額法で計算した計算にておこないますが、割増償却になると通常の償却に上乗せして償却計算できるので、早期に減価償却をおこなうことを可能としたものです。
しかし、賢明な皆様は、減価償却の本質を見誤らないでください。割増償却の適用ポイントは『早期の償却』ですから、確かに建築後5年ぐらいは、少し多めに減価償却費を計上するメリットはあります。その代わりに早目に減価償却が終了してしまうという点も見逃してはなりません。初期投資段階での早期経費の捻出をお考えであれば、有効利用となる制度であると言えます。
来年度以降の改正を占う ~相続税の課税体系変更は、なぜ、行なわれなかったか!?~
本来的には改正目玉であった『相続税の課税体系の変更』です。これは、平成20年の税制改正公表の際に、『平成21年度での改正予告』として示されておりました。昨今の不況情勢では、増税改正は受け入れられないということもあり、政府税制調査会でも『今後も見直しを検討』ということだけ触れ、具体的な改正時期には言及していない状況です。
ここがポイント!
ご承知のとおり、現行相続税は、やや極端な言い方をすれば「遺産をいかに分けようが、総額納付額は基本的に変わらない」計算になっています。これを改正(予定)では、財産取得者ごとに超過累進税率を適用する、つまり、取得者ごとの税額計算を個人ごとに行なうことになります。
●メリット
各財産所得者の取得財産額に応じて純粋な税額が算出されるので、納税義務者間の不公平感は、さほど生じないことになります。
●デメリット
メリットを読むと、一見、不公平感がない良い税制ととらえるかもしれませんが、おそらく課税最低限を引き下げる(基礎控除を低くする。)ことが予想されているため、従前の課税体系では税金納付が生じなかった方でも納税に移行するかもしれないといデメリットはあります。
税理士からのアドバイス ~特に、事業承継をお考えの方に~
本年度の改正は小振り(?)のような感じですね。それもこれも、景気悪化の影響があり、目玉改正となりそうであった『相続税の税体系の変更』(注)が無くなったこともが影響しているかもしれません。
今回、御縁があってLucraサイト内に掲載させていただいたわけですが、改正内容のうち、特に事業承継税制(非上場株の納税猶予)につきましては、細かい適用要件等があり、適用を受けるための事前申請なども必要です。適用を受ける前の下準備は、将来の不動産投資の計画案を投資アドバイザー&顧問税理士に相談して、より良い投資環境を調えてゆくなど、検討してみてはいかがでしょう。
工藤あゆみ氏のプロフィール
![]()
税理士 工藤あゆみ
平成4年 税理士試験合格。同年、KPMG国際税務部門にて外資金融機関の税務に携わる。その後IT関連企業のIPOに税務マネージャとして参加。平成11年に開業独立。不動産投資、相続税対策・事業承継対策、国際税務(外国人の申告、国内法人の海外出店・取引等)をメインに活動中。現在は業務の傍ら、税理士受験校にて相続税・消費税講師、東京急行電鉄株式会社税務研修講師、不動産関連セミナー(お宝不動産プロダクツ主催『お宝大家さんの税金百科』、週刊全国賃貸住宅新聞社主催 賃貸住宅フェア税務セミナーなど)を積極的に展開中。
くどう会計事務所webサイトへ

HOME
加盟店紹介